メザニンマネージャーは、プライベートクレジットの取引当事者として招待されるために、競争の激化を強いられている
業界関係者によれば、メザニンファイナンス(担保付きシニア債務とエクイティの中間にある資本階層)は割安でないことから、メザニンマネージャーは、報酬が低く、条件がより魅力的なユニトランシェ、優先株式などの調達戦略を提示する企業とのより厳しい競争に直面している。
ロンドンに本拠を置くオルタナティブ投資リサーチ企業のプレキンによると、プライベート・クレジット・マネージャーは世界全体で、2,360億ドルのコミット済み未使用資本を保有している(12月31日現在)。メザニンマネージャーはこれまでの堅調なリターンを背景に資金募集にさほど苦労しておらず、上記合計額の約20%を占めている。
だが、競争の激化により、メザニンマネージャーは、融資利率やリターン予想の引き下げを迫られている。
シカゴに本拠を置くプライベート・クレジット・マネージャーであるモンロー・キャピタルLLCの社長兼最高経営責任者(CEO)のセオドア L. コーニック氏は、「メザニンはかつて、強力な資産クラスだった。特にミドルマーケットのメザニン融資が他の形態の資金調達により一掃されている」と述べた。
低調さの一つの兆候:プレキンによれば、昨年募集された全体で1,070億ドルの米国のプライベート・クレジット・ファンドのうち、メザニンファンドの割合は11%に過ぎなかった。ちなみに、2016年の割合は33%だった。一方、プレキンの分析では、昨年の募集の減少は、大規模なメザニンファンドの募集が2016年よりも少なくなったためとしている。
さらに、6月30日までの12ヵ月間でメザニンファンドを通じたマネージャーの資金調達希望額が、前年同期比55%減少したことをプレキンのデータは示している。
ボストンに本拠を置く監査・助言企業であるグラント・ソントンLLPのプライベートエクイティ業務の国内責任者を務めるベン・ブランデス氏は、大量の資本がプライベートクレジットに流入しているため、「あらゆるものが圧迫されている」と述べた。
同氏は、「投資しなければならない資本がかつてなく増えており、より多くのファンドや企業が資金の捌け口を求めている」との見方を明らかにした。
リターンを得るために、引き続き投資家はメザニンに魅力を感じている。プレキンが2017年に調査した投資家の半数近く(48%)は、メザニンファンドがプライベートデットの中で最も優れたリスク調整後リターンを提供しているとみている。メザニンファンドが2016年9月30日までの5年間に、平均で年率12.2%のネット内部投資収益率(IRR)を上げ、同じ期間のディストレスト債やプライベート・デット・ファンドを上回っていることをプレキンのデータは示している。
498億ドルの待機資金
合計すると、メザニンマネージャーは2月14日時点で498億ドルの待機資金を持ち、北米のメザニンファンドだけでこのうちの366億ドルを占めているとプレキンは述べた。
クレッセント・キャピタル・グループLPは、メザニンに投資する待機資金を30億ドル以上保有している。
ロサンゼルスを本拠とするクレッセント・キャピタルの共同創設者兼マネージングパートナーのジーン・マーク・シャピュ氏は、「クレジット市場は時折極めて攻撃的になっており、誰もがメザニンは死んだと言っている。クレジット市場は現在、非常に攻撃的だが、過去にもこうしたことがあり、我々は資本を首尾良く投下し続けている。今回は違うかもしれないが、我々の経験によると選択が鍵を握ることになる」と指摘した。
同氏はさらに、「市場競争を背景に、メザニンマネージャーは調整を迫られている。実際、一部の新規参入者は、クレジット市場から退出する可能性がある」と述べた。
「我々は極めて柔軟であり、メザニン市場の変化に適応している。メザニン融資の適用金利の低下に伴い、我々のプライシングはレンジの下限に移行したが、過去のレンジを下抜けしているわけではない」と同氏は付け加えた。
金利の低下はマネージャーや投資家がリターン予想を調整する必要に迫られることを意味していると関係者は説明している。
ロサンゼルスに本拠を置きメザニン投資にフォーカスしているクレッセントのマネージングパートナーのクリストファー G. ライト氏は、「プライシングは過去12~18ヵ月にわたり低下している。一方、我々は投資を固定金利から変動金利に移行している。ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)が上昇しており、これが若干役に立っている。それでも、我々はリターン予想の下限の水準にある」と指摘した。
前出のモンロー・キャピタルのコーニックCEOは、「極めて大規模な案件では、メザニン債務に引き続き需要がある。だが、ミドルマーケットでは、メザニンは案件から締め出されている。これまで、通常案件の調達は、過半を占めるシニア債務と、メザニン、エクイティの組み合わせだった。最近では、一部のプライベートエクイティや企業買収者などは、シニア債務とエクイティで取引を賄っており、コストが高くなる可能性があるメザニンには居場所がない」との見方を明らかにした。
クレッセント・キャピタルは、利払い・税引き・償却前利益(EBITDA)が7,500万~1億ドルのアッパー・ミドル・マーケット企業をターゲットとしている。KKRアンド・カンパニーLPも、相対的に規模の大きい企業にクレジットを提供することを目指している。
ミドルマーケットか、それよりも小規模な市場
だが、現在募集中のメザニンファンドは、1つを除き、ミドルマーケットか、それよりも小規模な企業に投資することを目指している。例外は、ゴールドマン・サックスのGSメザニン・パートナーズVIIであり、プレキンによれば、このファンドは募集目標が100億ドルで、一次募集がクローズしたところである。ゴールドマンのファンドは、事業価値が5億~50億ドル超の企業に投資することを計画している。
次に大規模な募集中の2つのファンドは、それぞれ約10億ドルを目標としている。中国のCDHインベストメンツのCDHメザニン人民元ファンドVと、ブルー・ライク・アン・オレンジ・サステナブル・キャピタルのブルーオレンジ・キャピタル・インパクト・ファンドだ。
クレッセントは2017年1月に、最新ファンドである46億ドルのクレッセント・メザニン・パートナーズVIIから10億ドルを投資した。「これは大きな金額だ」とライト氏は述べた。
とはいえ、同氏は投資ペースが過去のファンドよりも鈍化していることを認めた上で、「昨年の我々のディールフローは過去数年と変わらず、275~300件の案件を審査したが、クローズ案件のヒット率は質やプライシング動向を背景に、過去数年よりも低下した」と述べた。
モンロー・キャピタルのコーニックCEOはさらに、「ミドルマーケット案件では、比較的新しく、増加しつつある調達オプションのユニトランシェ(これはシニア債務と劣後債務を組み合わせたものである)がメザニンの必要性を消滅させている」と指摘した。
クレッセントのライト氏の説明によれば、ユニトランシェ調達はEBITDAが2,500万ドル程度の企業から始まり、それ以降、EBITDAが4,000万~5,000万ドルのより大規模な企業に移行している。同氏は、クレッセントはこれよりもやや大規模な企業に投資しており、ユニトランシェとは競合していないと述べた。
ライト氏はまた、「ロウアー・ミドル・マーケットでは、ユニトランシェがメザニンマネージャーにとって、はるかに厄介なものになっている」と付け加えた。
さらに、先のグラント・ソントンのブランデス氏は、「借り手にとって優先株式の方が割高であるにもかかわらず、多くの借り手はメザニンよりも優先株式に注目している。多くの優先株式マネージャーがここにきて、強制償還日のないエバーグリーン証券を発行していることから優先株式は優位性を持っている。これに対し、メザニン債務は一般に3~5年で満期を迎える」と述べた。
この種類の柔軟性は、下降局面でローンの返済を強制されることを望まない借り手にとって重要だ。
ブランデス氏は、クレジット・マネジャー(特に、ジュニア・クレジット・ファンドのマネージャー)は、借り手に柔軟性を与えることによってのみ競争することができると述べた上で、「これは競争を背景としたユニークな状況だ」と続けた。
例えば、ミドル・マーケット・クレジット・マネージャーのコムベスト・クレジット・パートナーズは、1月29日に第4ファンドを目標の6億5,000万ドルを上回る8億3,600万ドルでクローズした。同社はメザニンのみならず、担保付きシニア債務、ユニトランシェ、第二抵当権付き債務もオファーしている。ブランデス氏は、企業の「売り手になる好機だ」と述べた。
「白地のタームシート」
ブランデス氏によれば、一部のケースでは、プライベートエクイティ会社はターゲット企業にいわゆる「白地のタームシート」でアプローチし、当該案件の調達に関、売り手に最大限の支配権を与えている。
取引を賄う資金調達方法は、案件のバリュエーションに影響する。優先株式は低いバリュエーションを提示し、メザニンなどのジュニアキャピタルは、可能な中で最も高いバリュエーションを提示すると、ブランデス氏は説明した。
今では、直接融資ファンドが、かつてメザニンが提供した資金調達ニーズの大半を埋めている。プレキンのデータは、直接融資ファンドが2017年に544億ドルを調達したことを示している。これはプライベートクレジット戦略の中で最大である。実際、2月14日に発表されたマッキンゼー・アンド・カンパニーのグローバル・プライベート・マーケット・レビューによれば、(ディストレスト、スペシャルシチュエーションおよびメザニン債務への投資と対置される)直接融資を目的として設定されたファンドは、2017年にプライベートクレジット資本全体の51%を調達した。これは前年から25%の増加である。
カリフォルニア州サンタモニカに本拠を置くミドル・マーケット・クレジット・マネージャーであるテンネンバウム・キャピタル・パートナーズLLCのマネージングパートナーであるリー・ランドラム氏は、「プライベートクレジット市場はここ数年、すべての資本提供者にとって、より競争的なものになっている」と述べた。「その結果、メザニンの投資機会は現在、より競争的になっている。担保付きシニア融資市場が急拡大しているためである。それでも、メザニンに市場の居場所があることは確かだ」との見方を示した。